家庭環境の悪化

心の病は、その人のもっている素因とストレスの関係から生じると述べました。ストレスが強ければ、いくら素因がよくても、なんらかの心の病になることはあるでしょう。ストレスが弱くとも、素因的に弱ければ、心の病に到ることがあります。心の病は、相互関係によってつくりだされるのです。では、素因とはどんなものをいうのでしょうか。まず考えられるのは、家系のなかに精神疾患にかかった人はいないかどうかという遺伝の問題があります。遺伝的な問題がある人は、ある種の素因の弱さをもつ危険性は高くなります。現に、うつ病や分裂病になる人は、その家系にそれぞれつ病や分裂病の人をもっていることが多い。しかし、家族にも病気をもっている人がいる割合は、うつ病も分裂病もおよそ一〇%前後です。とすると、うつ病や分裂病においては、九〇%前後の人は遺伝負因なしに、発病しているということになります。したがって、遺伝ですべてを説明しつくすことはできません。しかし、家族に病気の人がいるならば、 一応その病気の素因を自分も有する可能性を考え、用心しなければならないとはいえます。

 

なんらかの身体疾患をもっている人は、心の病になりやすいとはいえます。たとえば、産まれる前からの奇形をもっている人、多発性硬化症や膠原病などの難病を抱えている人、また中高年になってから糖尿病、高血圧、肝臓疾患などの慢性病をもった人などです。素因というべきかストレスというべきか、容易に分けられないものではあっても、身体疾患をもっている人は、かなり危険率が高くなります。

 

家庭環境の悪化も影響します。たとえば幼児期から片親であるとか、両親のトラブルが多く、別居が多かったり暴力行為が家庭でよく見られた場合は、大きくなってなんらかの心の病になる確率は高くなります。それも幼児期からの体験であれば、ある意味では素因に近いものかもしれませんし、広い意味でのストレスともいえます。ここでもストレスと素因は、厳密に分けることができなくなることがわかると思います。